自分が、許せなかった…
「アーク…」
何も言わずに、只、只厳しい顔をして外に出ていったアークに、何も声を掛ける事が出来なかった。
彼がまとっていた空気は拒絶。その背中は、慰めを拒んでいた。
「でも、あれは、しょうがなかった。」
エルクは独り呟く。
-本当に…?
「どうしようもなかった…」
-それがどうした?
「許せる訳…ねぇよな…」
自分は一番それを知っている。大切なものを、守れなかった憤り…
「ミリル…ジーン…」
守れなかった大切なもの。許せなかった自分。もう、死んでも良いと思った。生きる価値など無い…と。
そこで、ふと、思う。
「あいつは大丈夫だろうか…」
精霊に選ばれた勇者だからと言っても、所詮は16歳のガキだ。しっかりしていて、大人びていると言っても自分とそう変わらない。それに、彼は言っていた。自分の夢を、語っていた…
「まさかこんなに大袈裟な事になるとは思ってもいなかったんだ。」
実はね、そう言ってアークは内緒の悪戯をばらした時のような顔をして言った。
「あの頃は、只、父さんに追い付く為だけに必死だったんだ。」
父は幼い頃死んだと思っていたという。しかし、生きていると知った時、彼はあらゆる手段を使ってでも会いたいと思ったらしい。
しかし、父の姿を追って知った事。それはスメリア王家としての余りにも重い運命。そして、世界の危機。
「でも、結局俺が見ているものは同じなんだ…」
苦笑して彼は語る。囁かな、余りにもささやかな、しかし、自分は考えた事も無いような素敵な夢を…
「精霊の力を借りて、此の傾いた世界を直して、平和になったら…そうしたら、また、家族皆で幸せに暮らせるんじゃ無いかな、ってね。」
そしてそこにはククルもいるんだ、と惚気始めたアークを、エルクは遠慮無しにどついてやった。そして、その夢の実現を心から願った。
でも、もうそれは適う事のない、永遠の夢…
大切なものも守る事が出来なくて、何が世界を救うだ…何が勇者だ…
トウヴィルのいつもと変わらない大きな夕日を見ながら、アークは自嘲した。
守りたいものが在った。無くしたくないものが在った。笑われる程小さな夢が在った…
もう、それは適わない。
「父さんっ…」
最期に貰った父の形見を握りしめる。心の中に在る感情は、きっと、怒り。不様な自分への、怒り。
眠っている母の顔が見れなかった。絶対守ると言ったのに、自分の所為で、辛い目に遭わせた…
自分の力が至らなかった所為で、最愛の人を助ける事が出来なかった…
大切な人の幸せを守れなくて、何が勇者だ。
「悲劇の主人公を演じるのも、いい加減にしたら?」
冷ややかな声に振り向いたら、そこには声の通りの冷ややかな表情のククルがいた。
「そんな所でいじけている暇なんてあるの?貴方にはやる事が在るんじゃないの?」
厳しく、一気に言った後に、ククルはふっと優しく、少し悲しげに笑った。
「泣いてはいなかったのね。いきましょう。後悔するのは、全てが終わってからで十分よ。」
「…うん」
アークは小さい子供の様に、頷いてから、神殿へと戻るククルの後について行った。
後悔は後で良い。
より、後悔しないように、今はただ、ただ、前へ進むしかないのだ…
「ククル…」
呼んだ声は、なんだか自分でも頼りが無く聞こえた。なぁにと答えて振り向いた自分の最愛の人に頑張って笑いかけてから言う。
「有難う。まだ、頑張れる。」
「行きましょう。」
皆、心配しているわよ。そう言ってククルはアークを促した。
大丈夫、まだ、頑張れる。
無理に笑ってそう言った彼が痛々しくて、見ていられなくて、行きましょうとだけ言ってククルは、急ぎ足で神殿に入った。
泣いていると思った。
泣いて当然だと思った。
下手な慰めの言葉なんて知らないから、思いきり冷たくしてみた。早く立ち直って欲しかったから…全てを拒絶して、自分に対する怒りで一杯の彼の姿を見ていたく無かったから…
彼は泣いていなかった。
まだ、頑張れると言って、笑って自分を安心させようとしてくれた。
その、強さと、優しさが、痛かった…
「アーク」
起こったように急ぎ足で歩いていたククルが不意に立ち止まって振り向いた。
「辛い事もいっぱい在るけど、頑張ろうね。」
その目には涙が溢れていた。
「ああ、頑張ろう。」
もう少しだから。もう少しで全てが終わるから。そう言って、ククルの涙を拭って優しく抱き締めた。
沈んで、後ろ向きになっていたのが変わった。彼女のお陰で、前向きに、希望をもつ事が出来た。だから、もう一度言う。
「有難う。」
「なんでぃ…」
余りにも心配だったから様子を見に来たら、いきなり、ラブラブモード全開を見せ付けられた。
「心配して、損した…」
隠れる必要も無いのに、隠れてエルクは呟く。
「やっぱりあんたはこうじゃなくっちゃな…」
何だか嬉しかった。立ち直ってくれたのが、嬉しかった。
踵を返して、走り出す。心配して、落ち込んでいる仲間達に知らせてやろう、もう大丈夫だって。
切なくなる程強い、彼は、まだ、頑張れる。
だから、おれたちも、まだ、頑張れるのだ。
何となく、書きたくなったから、書きました。即興アーク。
何が書きたかっのかな~自分(苦笑)
ヨシュアさんが亡くなられて、落ち込んだアークを見て皆が心配しています。
でも、ククルの一言で単純アークは立ち直ってもっと単純な仲間達はそれを見て元気になりましたとさ。
…と言った話をかこうと思ったのは確か。
う~~ん、でも、何かあまり練って書かなかったので、途中で何がなんだか判らなくなってしまいました(苦笑)
結局、アーククルで落ち着かせてしまった(汗)