20000ヒット記念小咄

伝説の神話〜或日の詩〜
勇者アル 〜その1・アル〜

 良い天気だ。雲一つない青空の下で、アルは、大きく伸びをした。
 少しでも空に近付きたかったから、家の屋根によじ登った。屋根から落ちるような子供じゃもうないのに、母は、未だに屋根に登ると怒る。  五月蝿いと言いたく無いくらいの心配性なのだ。でも、その理由を知っているから、少年は、何も言えなかった。
 買い物に出かけている母に見付からない、しかし、大空が見える位置が有る。そこにアルはいた。

 今日、小さい頃から一緒に冒険に出ようと言っていた少年が、もう、無理だと言って来た。
 5年前までは沢山いた仲間達の最後の仲間だった。
 彼も、矢張り家を継ぐと言う。確か彼の父親はレーベにそう大きくない畑を持っていた筈だ。両親、兄弟にいつまでも夢を見てふらふらしていないで、地に足をつけて仕事をしろと言われたらしい。
 其れを聞いて、そっか、と少ない言葉をだし見上げた先にあったのが、この大空だった。

 目を瞑ると色々な音が聞こえて来た。暖かい日射しが染みて来た。
 アルは思う。
 誰も仲間がい無くても、自分は矢張り旅立つのだろう。父のように。
 どうしようも無く小さい自分にできる事なんて大して無いだろうけど、でも、やらずには居られない。
 正直な話、こうやって寝転んでいる間に沢山の人がモンスターに襲われていると思うと、居ても立っても居られないのだ。
 其れが、自分だ。良く、幼馴染みに余計な所で責任感を発揮したって意味無いと言われるが…其れが、自分なのだ。

 ゆっくりと目を開ける。
 少し眩しかった。
 光に目が馴れたら、空の蒼さに少し感動してしまった。
 下の方で自分を呼ぶ母の声が聞こえる。何時の間に、帰って来たのだろうか…
 返事をして、アルは屋根から降りた。
 責任感じゃ無くて、正義感と言って欲しかったな、そう思いながら。
 旅立ちまで、あと10日…
〜その2・ヨウ〜

 あら、あなた、何処かで会った事ない?
 ん?始めてだぞ、此処に来たのは。
 そう、そうよね、確か、それって私の小さい頃の話なんだし…貴方のお父様くらいかしら?
 …そうだろ。
 違うって感じだけど、ま、良いわ。こんな時期に此所に来るような子だものね。少しはミステリアスな方が良いわ。
 ミステリアスって…
 違う?そうでしょ?だって、此所は、アリアハンは、数年前から閉じているのよ。
 閉じて…ああ、そうだな。
 こんなめだつ子、昔から此所に居たら私の情報網に掴まらない訳ないの。って事は、外から来たんでしょ?
 ああ、外から来て、取り敢えず冒険者の登録をしに来たんだが?
 あ、そうだったわ、本業ね。いらっしゃい。此所はルイーダの酒場…

 ところでヨウ、聞いても良いかしら?
 何を?
 どうやって此所に来たの?
 企業秘密。
 いや、答えになって無いし…
 考えてみろよ。俺は盗賊だぞ。

 どうやったか分からないけど、何処からとも無く現れるってのが盗賊だろ?
 いや…あんた、自分の職業誤解して無い?そこまで行くと手品師よ…
 …そうなのか?

盗賊ヨウ
僧侶ユウカ 〜その3・ユウカ〜

 七光りの何が良いの?

 今日もパパと喧嘩した。
 パパは、一人娘の私を継がせようとしている。
 結構特殊な仕事だから、血筋がモノを言うのは知っているけど、私は御免だ。
 遊ぶ事も出来ないで、毎日、パパのところに来た偉いお客さまと、挨拶ばっかり。面白く無い話を聞くフリをする事は、もう馴れた。
 たまに、時間が出来て遊ぼうと思っても、パパの後にくっついて、偉い人とお話ができる私は皆と身分が違い過ぎるっていって、誰も遊んでくれない。其れどころか、パパが偉い人で将来安泰ねなんて、嫌味な口調で言われたら、遊ぶ気も失せるってものよ。

 今日、旅に出るって言ったら、パパに猛反対を喰らった。
 この特別な力とやらを魔王によって苦しめられている人の為に使わないで、何の為の力なのよ…そう思ったから、旅に出るって決めた。パパは、反対する事くらい分かっていたけど。
 でも、一応養われている身って奴だからパパに報告に言ったの。
 散々まあ、良く此所までと言うくらい小言言われて、思った事は一つだけ。
 確かに私を可愛がってくれているのは分かったわ。心配でならないのも。でもね、私だけが良くても私は嫌なの。
 そして、そう言ったら、今度は泣き落しを始めた。なんて情けない…これが、あの大神官なんて。
 こういう泣き言を聞き流すのは、10年以上聞いている物だから、流石に苦じゃ無くなって来た。だって、取り敢えず頷いていれば良いんだもの。辺に何か言ったら長引くばかり。でもね、パパは、学習能力無いのかしら。泣き落しで私の意見を変えた事って有る?

無駄よ、もう決めたの。私は出て行く。

 説教から解放されたその足で、自分の部屋においてあった旅立ち用の荷物を掴んで、愛用の抜け道を使って抜け出した。

 御免ね、パパ。大好きなのは確かよ。
 今よりも何十倍も良い女になって、立派な神官になって帰って来くるから、帰って来たらきちんとパパの後継ぐから、だから、待っていてね。